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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 手作りという特別【後編】

LOVE SO LIFE 目次 二次創作Index

時季はずれのバレンタイン話、後編です。

「あーっ!」
「中村さんっ!?」

 突然聞こえた大声に、政二はガバッと起きあがり、慌てて声の聞こえた方へと向かう。
 そしてそこで見たのは、口元がチョコレートだらけの茜と葵だった。

「茜ちゃん、葵くんっ、食べちゃったの!?」
「「おいしーよ?」」

 きょとん、と詩春を見上げながら竹串を口に運ぶ葵と、目をキラキラさせてスプーンを口に運ぶ茜。

「スプーン? って、あっ!!」

 詩春の視線が開けっ放しの冷蔵庫に向けられる。ああ、また電気代が……と思いながら、政二はとりあえず状況を把握しようと詩春に問いかけた。

「中村さん? どうしたの?」
「あ、あの……松永さんに、と思って作ってきたチョコムース……。茜ちゃんが、食べちゃったみたいで……」
「げ!?」

 思わず子供の頃のような口調で返してしまったが、そんな事を気にする余裕など無く。
 がくり、と政二は肩を落とした。職場で貰う数多のチョコレートよりも、詩春一人から貰ったチョコレートの方が嬉しい。去年だって、タクシーに積まれたチョコレート達よりも、詩春から貰ったチョコレートの方が何倍も嬉しかったのだ。それなのに。

「……食い意地が張ってるにも、程があるぞ茜……」
「ご、ごめんなさいっ、私がちゃんと見てなかったから」
「いや、この場合玄関先で倒れた俺も悪いから……けど」

 すたすた、と長い足で歩いた政二は、茜の手からほぼ空っぽになった器を取り上げた。

「あーっ!! せーたんっ」
「これ以上は駄目。お前らチョコ食べ過ぎだっ。というか、どんだけ食べたんだ……」

 散らかった竹串、零したであろうチョコレート。何故竹串があったのかは解らないが、本数からしても結構食べているはずだと推測する。あまり食べ過ぎれば体に毒だし、成人しているならまだしも、まだ小さい子供達に、これ以上食べさせる訳にはいかない。

「う~っ」
「むーっ」
「睨んでもダメ」

 じーっ、としばらく三人の睨み合いが続く。この状況を打破したのは、やはり詩春だった。

「ふ、二人ともっ、ホットミルク飲もうか! 甘ーいの!」

 瞬間、茜と葵の大きな瞳が詩春を見て。

「「のむーっっ」」

 と、小さな体を使って主張した。
 結局蜂蜜をほんの少しだけ入れたホットミルクを双子に飲ませ、詩春と政二は散らかった台所を片付け。その後すぐに、体が温まったおかげで眠気を催したのか、うとうとし始めた二人を寝室へ運び、ほっ、と我知らず溜息をついた。

「全く……暴走列車か、こいつらは」
「ぼ、暴走列車は言い過ぎじゃ……」
「いや、全然言い過ぎじゃないと思う」

 でなければ猪突猛進か。はたまた超高速の新幹線、それとも赤い布に向かう闘牛。とにかく子供のパワーは凄すぎて、本当に、詩春がいなかったら政二だけでは止められない。

「遅くなっちゃったね、ごめん」
「いえ、まだ大丈夫です。……あの、松永さん」
「ん?」
「お渡ししたい物があるんです」

 そう言った詩春は、ててっ、とリビングに姿を消してしまった。訝しみながら後を追って部屋に入ると、いつも彼女が持っているバッグから、小さい箱が二つ、顔を出す所だった。

「これ……」

 リボンで飾った小さな紙箱を、詩春は一つずつテーブルの上に置いた。

「こういうの、お好きかどうか解らないんですが……ハーブのサシェです」
「サシェ? ……って、ポプリみたいなやつだっけ?」

 サシェとポプリと、何が違うのか正直政二には解らなかったが、とりあえずその解釈で間違ってはいなかったらしい。

「カモミールとラベンダーです。安眠効果や疲労回復のハーブなんですよ」

 リボンを解き、片方の箱を開ける。爽やかなリンゴのような優しい香りが、ふわりと広がった。

「こっちがカモミール?」
「はい。カモミールは白で、ラベンダーの方は薄紫色です」

 白い布地が、小さなクッションばりに膨らんでいる。ラベンダーの方はまだ開けていないけれど、きっとこっちのサシェと同じように膨らんでいるのだろう。

「二つとも、ドライフラワーにしたのを貰ったので……作ってみました」
「え!? これも中村さんが作ったの!?」
「そ、そんな驚かれるようなことじゃ……簡単な物で、申し訳ないんですけど」

 そんな事はない。それを言ったら政二だって、針を持つ事など滅多にない。……というか、義務教育を過ぎてからはないかも知れない。

「松永さん、いつもお疲れの様子で帰ってらっしゃるから……少しでも疲れが取れれば、と思って……」

 詩春が来てくれるようになってから、大分政二の負担は減った。けれど、働く世の中には理不尽な事が多いのも事実で、そんな時はやっぱり疲れてしまう。

「……ありがとう……」

 素直に、嬉しかった。彼女が自分を気にかけていてくれた事が、まして、こんな可愛らしいプレゼントを貰ったのも考えてみれば初めてだった。
 お金では買えない、ほんの少しだけの『手作り』という特別が込められたプレゼント。
 お礼を唇に乗せた政二に、詩春はホッとしたように微笑んでくれた。
 その微笑みに、無意識のうちに惹き付けられて────……。

「松永さ……?」

 彼女は動かない。政二がこれから何をしようとしているか、解ってはいても、きっと頭が追いついていない。政二だって、自分が何をしたいのかなんて解ってはいないけれど。
 ただ、詩春に触れたいと────そう、思った。

「……しあるたん~……」

 微かな泣き声。反射的に寄せていた体を元に戻し、政二は口元を手で覆った。

「わ、私行ってきますっ」

 パタパタとリビングを去る詩春の、長い髪から覗く小さな耳は僅かに赤く染まっていて。あのまま彼女が動かずにいたら。葵が彼女の名前を呼ばなかったら。きっと────。

「……お、落ち着こう、うん」

 開けたままのカモミールのサシェを、そっと顔に近づけ、淡く優しい香りをめいっぱい吸い込んだ。
 彼女が戻ってきた時に平静であれるように、と。

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 その後の双子は……? 芽依作:「腹痛編」  琳架作:「鼻血編」 お好きな方へどうぞ♪
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