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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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執事様のお気に入り 執事様は教育係?

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以前はレース編みのコースター、そして今回は……マフラー?



「う~ん……」
「あらあら、良ちゃんどうしたの?」
「あっ、薫子さん。なかなかうまくいかなくて……」

 良の手元にあるのは、家庭科の課題である、毛糸のマフラー。お菓子は作れる良でも、こと編み物に関しては未知の世界で、いつだったかのレース編みのコースターでも、ものすごい事になっている。
 以前はかぎ針編みだったけれど、今度は棒針編み。単純なメリヤス編みで、模様すら入れない(というか、入れる技量がない)課題なのに、何故かどんどん編み目はきつくなっていくし、心なしかだんだん台形になってきているのだ。

「どうして~?」
「均等に編めてないのと、多分どこかで編み目を取り忘れてるんだと思うわ。ちょっと貸してくれる?」

 良が素直に編みかけのマフラーを差し出すと、薫子は「ちょっと借りるわね?」と、かぎ針を手に取り、テーブルの上に広げて「あ、ここと、ここ……、ここも、みたいね」と呟きながら、編み目を増やしていく。

「どうして解るの、薫子さん」
「ん~、慣れもあると思うのだけれど……良ちゃんのこれ、藍色一色だから見つかりにくいんだと思うわ」

 もう少し明るい色なら、編み目が減った事にも気付いたのだろうか。とはいうものの、未だ完成まではほど遠く、完成したとしても、自分で使う気にはならない。誰かにあげるなど以ての外だ。

「良ちゃん、肩と指に力が入りすぎているのかも知れないわね」
「そうかも」

 何分初めての事だから、小指にかけた糸はなかなか進んでくれないし、無理矢理引っ張れば編んだ目は緩くなるし。

「何だ、氷村。肩凝ってるのか?」
「ひぇあ!?」

 突然両肩に触れた温もりに、良はびくりと体を震わせた。彼女の過剰な反応に驚いたのか、肩に触れていた温もりも一緒に消え去った。

「な、何だ!? どうした?」
「伯王~……。驚かせないでよ~……」

 突然触れられるのに、大分慣れてきてはいるけれど、彼を好きだと自覚してからは、不意打ちの接触にはやはり驚いてしまう。

「何だ何だ? 伯王が何した?」
「氷村さん涙目になってない?」

 庵の言葉に心配になったのか、「大丈夫か?」と伯王が同じ目線になって顔を覗き込んでくる。ちょっとだけ、ばつが悪そうなその顔が、良にとっては微笑ましく見えた。

「うん、大丈夫。こっちこそごめんね、大げさに驚いちゃって」
「いや。それより、何してたんだ?」
「……聞かないで~」

 と、頭を抱えたくなったけれど、編み目が不揃いなマフラーは目の前に置かれているのだから隠しようがない。

「でっかいコースター?」
「え、モチーフじゃないの?」

 きょとん、とした顔で編みかけのマフラーを指さす隼斗と庵。

「マフラー……に、なる、予定なんだけど……」
「かぎ針じゃなくて棒針ですから。良ちゃんの場合、あんまり単調な作業は好きではないみたいですし」

 かぎ針よりも、棒針編みの方が、単調さに輪がかかっている、ように思う。もっとも、模様を入れなければの話だが。

「そう! そうなの!」

 黙々と続ける編み物は向いていないと自分でも思う。お菓子や料理はキッチンを動き回るし、それなりに体力も使うから好きだけれど、編み物は、動かすのはほぼ腕と指だけ。

「だけど、そうも言ってられないだろ。こうしてやってたって事は、家庭科の課題か?」
「うん……」
「見ててやるから、頑張れ。な?」

 ぽん、と頭を撫でられる。薫子が、編み目を増やして元に戻してくれた編みかけを渡してくれる。

「そうだよね。提出しなきゃならないんだし、頑張る」
「よし」

 と、再度編みかけを手にとったまでは良かったが。

「氷村、そこ編み目が飛んでる」
「え? あっ。えっと、こう?」
「違う、そこをやったら増やし目に」
「え、え? 零した編み目ってどこっ」
「こら、広げたらほどけるだろう!」

 何だか監視されている気分になりながら、それでも懸命に編み進めていく良。そしてそれを、ソファの隣に座って、教本を眺めながら間違いを指摘していく伯王。
 そんな二人を、突然フラッシュが襲った。

「ふふふ。いい写真が撮れました」
「か、薫子さん……? 今……」
「ええ、次回の黒燕画報用に一枚。タイトルは、そうねぇ……『執事様は教育係?』なんてどうかしら♪」

 さ、どうぞ続けて下さいな。と、にこにこ顔の薫子はカメラを手に持ってまま、良と伯王のシャッターチャンスを狙っていた。


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