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暁のヨナ 独白

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4巻 青龍に会いに行った三人を待つハクの独白。



(声、震えてたな……)

 ヨナとキジャ、ユンの姿が消えた後、見張りと牽制役としてその場に残されたハクは、大切な姫の手を掴まえていた掌を、ぐっ、と握り締めた。
 大丈夫だと言ったその唇も、握り締めた手も震えてはいなかったのに。ただ、その声だけが、微かに震えていた。恐らくはユンもキジャも気付きはしなかっただろうけれど。
 きっと必死に強がっていた。ハクに頼らずに頑張ろうと、頼らなくても出来るのだと。
 もしかしたらヨナは、誰よりもハクに己を認めて欲しいのかもしれない。
『少しは役に立ってる』と。

(思い違いもいいとこだ)

 ふ、と息を吐くように苦笑する。
 そもそも守るべき対象がヨナでなければ、こんな旅などしていない。役に立つとか、立たないとか、そんな事は二の次三の次で。
 ヨナがヨナであること。それこそが、ハクの原動力なのに。

(……ま、まだまだお子様だしな)

 ハクの考えや想いを伝えても、ヨナの事だ、明後日の方向に解釈しかねない。最悪、「私も好きよ?」とあっけらかんと言われてしまうだろう。仲間として、の但し書きがついて。

 甘やかす事は容易い。ハクだけを頼らせることだって簡単だ。ヨナの行動、言葉全てを決して否定しなければいいだけ。諭すことも言い聞かせることもなく、まるでぬるま湯に浸かるかのような穏やかな顔をしていればいいだけだ。
 しかし、それは出来ない。この旅が終わった暁には、一国の主となるかもしれない彼女に頼られるのが、自分一人ではダメなことぐらい解っている。
 王は、民があってこその王だ。様々な意見を聞き、そして判別し、決定を下す。
 臣下の一人としてならば、ハクもヨナの傍にいられる。けれど、ヨナにとっての『ただ一人』には……なってはいけない。

 時折、彼女に絶対の信頼を置かれていることを誇りに思う反面、その信頼を崩したくなる。
 彼女がハクを大切に想っているかのような発言をする度に、信頼しているからこその微笑みを見る度に。
 抱きしめて、口づけて、「ただ守られていればいい」と告げられたら、どんなに楽だろう。

(……それで頷くような姫さんじゃねぇけどな)

 例えば火の部族に追い詰められた時。例えば四龍を探しに行くと決めた時。ヨナは守られているだけの自分を良しとしなかった。だからこそ弓を覚え、自分の足で四龍を探している。
 そんなひたむきさを、愛おしいと思う。

「……ちゃんと帰ってきてくださいよ、姫様」

 ついでにユンと白蛇も、と心の中でわざとらしく付け加えて。
 三人が消えた通路の奥を横目で見ながら呟くハクは、この後起きる悲劇をまだ知らない。


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