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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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頂き物 「譲れないモノ」

「空想 i 」の朱音さまより、サプライズでとても素敵なお話を頂きました。当ブログに掲載している「お祝いはチョコケーキ」のバレンタインSSです。

相変わらず賭けに使われている二人、さて今回の賭けの内容は?


 木枯らしが通学路を一緒に歩き、雪がふわふわと落ちてくる朝。
 寒い日なのに、街行く人や俺と同じ学校に向かっている生徒達はどこか浮かれていそうで、吹き抜ける風はどことなく甘い香りがするようで。
 そう、今日はバレンタインなんだ。
「おーっす!」
「あぁ、瀬能か」
 あと少しで学校が見えてくる所まで来た時に、後ろから肩を軽く叩かれたので振り向くと、声の主は同じサッカー部員で賭け大好きな瀬能だった。
 他愛も無い会話をしながら並んで歩き、校門をくぐった辺りでこんなことを言う。
「今日はバレンタインだな! お前と俺、どっちが多くのチョコレートをもらえるか賭けないか?」
「そんなしょうもないことをするかよ。賭けなら他の奴としろ」
「あ、なるほど。伊吹は里沙ちゃん以外の女の子からはチョコレートを受け取らない主義かぁ。いいな、ラブラブな恋人同士は!」
「うっせーな!」
 冗談を飛ばしてくる瀬能の言葉を適当にあしらいながら、靴を履き替えようと下駄箱を開けたその時だ--
 バサバサッ! と音がして、落下してきたたくさんの何か。
「な……何だ、これは……」
 恐る恐る視線を下にしてみると、床に散らばったたくさんの包み達が。中には、俺の足の上に着地した物もある。
 確認しなくても、中身はきっとチョコレートで間違いないだろう。
 まさか下駄箱がびっくり箱と化しているとは思っていなかったために、ただ呆然としていると、瀬能の嬉しそうな声が響いた。
「すげー、伊吹はやっぱりもてるなぁ! 賭けなくて良かったぜ」
「く、下らないことを言ってないで、拾うのを手伝ってくれよ。な?」
 俺としては賭けに乗っておいた方が得をしたかな。なんて少し思ったりするものの、もちろん本気では無い。
 他の生徒達の目が痛いので、二人で散らばった包みを慌てて拾い集める。
「彼女がいてもこの人気なんだからな。……でもさ、こんな場面を里沙ちゃんに見られてもいいのか?」
「正直なところ、見られるとやばいかもな。だけど、里沙はまだ登校して来てないし大丈夫だろ」
「いや……、伊吹? 後ろを見てみ?」
 どことなくひそひそと囁くような言葉と指差された方向に顔を向けてみると、そこにはいつの間にか登校して来ていた里沙が。
 彼女は軽く唇を噛み締めて、何かを考えている表情のまま、
「伊吹、瀬能くん、おはよう。先に行くわね」
 その言葉だけを残して、すっと立ち去ってしまった。
 同情しているのか笑い者にしようとしているのか、どちらかは知らないけれど、瀬能は無言で肩をぽんぽんと叩いてくる。
 だけど、里沙に現場を見られてしまった衝撃の方が大きくて、触れられた刺激くらいじゃ脳は正常に動かない。
 可愛らしくラッピングされたたくさんの包みを両手に抱き、ぽかんと立ち尽くす俺の姿は滑稽か? それとも哀れか……?

 重い足取りでどうにか教室に向かい、自席に着いてからもずっと頭を抱えっぱなしだ。
 さっきの里沙のあの表情……。まずいな、もしかしたら本気で怒っているのかも知れない。
 そりゃそうだよ。自分の彼氏が他の女からもらったチョコレートを抱え込んでいたら、誰だって気分を害すよな。
 だったら、この包みを下駄箱に詰め込んでいった本人達に返すか。とも思うけれど、匿名の物が多く、そうもいかない。
 かと言って、捨てるのも申し訳無い気がするし、家に持って帰るのもあれだしな……。
 あぁ、どうしたらいいんだ!?
「おうおう、モテ男。悩んでるみたいだな」
 ひたすら考えるだけでどうしようもなくなって、目を強く瞑って唸っている最中、声を掛けられたので顔を上げる。
 すると、人の机の上にどんっと腰を掛け、こちらを見下ろしている瀬能。
「たくさんのチョコレートの処理方法について、悩んでるんだろ? 俺にいい提案があるんだけど、聞くか?」
「是非、頼む。俺一人じゃどうにも出来ないんだよ。知恵を貸してくれ!」
「うん。いっそのこと、里沙ちゃんと別れちまうってのはどうだ? 実は、お前達が別れるか別れないの賭けをしていて……って、嘘だ! 冗談だよ!」
「本当に冗談だろうな!? え、こらっ!?」
 とんでもない案を投げつけて来たので、首を肘で絞め上げてやる。
 大体、どうしてこいつらは里沙と俺を賭けの材料にしたがるんだよ!?
「じゃあさ、こうすればいいんじゃないか?」
 何か違う提案をしようとしたので解放すると、苦しそうに呼吸を整えてから、人差し指をこちらに向けて言った。
「サッカー部の面々で食えばいいじゃないか。そうすれば皆も喜ぶし、伊吹も罪の意識が無くなるだろ?」

 今日の部室はいつもと違って、甘い香りに包まれている。
「やっぱり身体を動かした後には、甘い物だよなー」
「こっちの箱も開けていいか?」
 瀬能の提案に従って部室のテーブルにチョコレートを置いておいたら、予想以上に喜んでくれたサッカー部員達。
 次々と空になっていく包みや箱を見ると、少し安心出来るな。
 証拠隠滅……って訳では無いけれど、これが一番いい処理方法だと思うし。
 瀬能の言うことも、たまには役に立つじゃないか。なんて思って、一人で腕を組みながら頷いていた時だった。
「伊吹、里沙ちゃんからのチョコレートはどれだ? 俺らにも食わせてくれよ!」
 その言葉に、ぴしりと音を立ててひびが入った心。一瞬、頭が真っ白になってしまった。
 そうだ。匿名な贈り物のことばかりを考えてしまっていたけれど、よくよく思い返してみれば……、肝心な里沙からもらってないじゃねーか。
「え、まさか。もらってないとか……?」
「嘘だろ!? 駄目元で伊吹が里沙からチョコレートをもらえない方に賭けたけど、まさかの勝利じゃないか!」
「お前らなぁっ……! やっぱり俺達で何かしらの賭けをしてたのか!?」
 聞き捨てならない発言が聞こえたので、皆の前でかかされた恥ずかしさと怒りとを一緒くたにして怒鳴ろうとしたその時に、部室のドアががらりと開き、
「そろそろ戸締りしますよー」
 現れたのは、帰宅準備をし終わっている里沙だった。
 そこにいた部員全員の無言な視線が彼女と俺を交互に見て、それから散らばったチョコレートの包みを見て。
 いっそのこと茶化してくれればいいのに、こう言う時に限ってどうしてか黙りこくってしまう瀬能。
 誰もが不自然に口を閉じ、気まずそうな視線だけが行きかうこの空気。
 ……非常に居心地が悪い。よし、ここは逃げるが勝ちだ!
「里沙、帰るぞ!」
 勢い良く席を立ち、左手で鞄を引っ掴んで、右手で彼女の腕を握って部室から飛び出る。
「え、ちょ、伊吹! まだ戸締りしてないのよ!?」
「里沙ちゃん。戸締りは俺がやっておくから、今は伊吹を慰めてやってよ」
 後ろから聞こえた少しだけ真面目な瀬能の声からして、部員達は俺を哀れに思っているに違いない。
 くそ、バレンタインとはとても思えないほど惨めな一日じゃないか……!

「伊吹、いつまで腕を掴んでるのよ?」
 早足ですたすたと校門を出て、いつもの通学路に差し掛かった辺りで声を掛けられ、はっとして腕を離す。
 何となく気まずくて、意味も無く空を見上げると、だいぶ日が長くなってきたなぁと感じられて。
 でも今日と言う日が終わるのは後数時間で、そのわずかな時間で俺の心が救われることは……無いだろう。溜め息が漏れてしまうな。
「サッカー部の皆とチョコパーティーをしてたのね。楽しそうだったのに、先に帰って来て良かったの?」
 落ち込み気味だったところにその言葉が飛んできたために、かちんときてしまった。
 彼女を振り返り様に、思わず怒鳴り口調で言ってしまう。
「全然楽しくなんかねーよ!」
「え? どうして?」
「どうしても何も、朝から匿名チョコレートの処理方法に頭を悩まされて、なのに一番重要な里沙からはもらえてなくて、サッカー部の奴らには哀れに思われるし……」
 心の底からきょとんとしている里沙に対して、むきになってイライラしている自分が情けない。
 同時に、子供みたいな言動を取ってしまった恥ずかしさも込み上げてきて、顔を背けようとしたんだけど。
「私、伊吹に渡すチョコはちゃんと用意してるわよ?」
 そう言って、鞄を軽く漁ってから差し出されたそれは、ちゃんとリボンで飾られていた。
 まさかの展開に、ついさっきまでの怒りや恥ずかしさはどこへやら。ただただ呆気に取られてしまう。
「どうして今までくれなかったんだよ? 朝に下駄箱で会った時にくれても良かったんじゃないか?」
「だって、伊吹がサッカー部の皆とチョコパーティーをするのは分かっていたもの。だから、私が渡したチョコもそれに紛れちゃったら寂しいなと思って……。だから、今まで渡さなかったのよ」
「な、何だよそれ……。俺の今日一日の苦悩は何だったんだ」
 安心したものの疲れが一気に出て、思いっきりうなだれてしまう。すると、そんな俺を見て里沙は言うんだ。
「あのねぇ! 言っておくけれど、悩んだのは伊吹だけじゃないのよ? 私だって……、それなりにやきもちを妬いてるんだから」
 怒っている声で、だけどどこか悲しそうで。
 頬をうっすらと染めて、俺から視線を外した里沙の表情に、心臓が大きく鳴る。
 不意打ちで見せられた可愛さに我慢出来なくなって、思わず抱きしめてしまうんだ。
「い、伊吹? 急に何をするのよ?」
 慌てて解放を求めている里沙の質問には口では答えず、まだ離すつもりは無いんだと言うことだけを分かってもらいたくて、一層腕に力を込めてしまう。
 確かに里沙のチョコレートと、里沙自身だけは誰にも譲りたくない。うん……、譲れないな。
 だから、こうして強く抱きしめて捕まえておくんだ。

 よし。明日になったら、俺が里沙からチョコレートをもらえない方に賭けていた奴に負けを認めさせてやろう。




 朱音様からのびっくりサプライズ短編です。
 最初読ませて頂いた時に、気になったのが伊吹の下駄箱に入っていたチョコレートの数です。下駄箱って、そんなに大きくないから精々5、6個だと思うんですけど……サッカー部で食べたって事は、恐らく机の中や知らないうちに鞄の中に入ってたりとかしてたんでしょうか? と、推理してみたり(笑)
 チョコの処理方法に悩む伊吹に、瀬能くんの持ちかけた話がまた笑えました。「いっそのこと別れたら」って、伊吹にそんな気がこれっぽっちもない事を知っていて言うんですから。でもってまたもやそれが賭けの対象……。どんだけ賭けが好きなんでしょう、サッカー部の面々は。とはいえ、それで逆上する伊吹が面白い、と言うのが大半の意見だと思いますけど。……いじられている事にいい加減気付こうよ、伊吹……。
 その点、里沙は飄々としてましたね。悩まない訳ではなかったし、やきもちをやかないわけでもなかった。だけど、「その他大勢」の中の一人じゃなくて、伊吹にとっての「たった一人の女の子」でいたいから、なかなか渡す事が出来なかったのかなぁ。
 伊吹も、里沙も、お互いがお互いにとっての「譲れないモノ」。
 それがとても伝わってきて、幸せな気分になりました。

 ええ、本当に幸せな気分でした。最近、精神的にきつい事が立て続けに起きていて、更新どころかパソコンに向かう事すら億劫だったんですが、読んだ途端に創作意欲がムクムクと……。ずっと書きたかった「希美編」を、3時間程度で書き上げちゃえるぐらい、本当に元気を頂きました!

 朱音さん、本当にありがとうございました!

 朱音さまのサイトはこちらです → 「空想 i 」



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Comment

ありがとうございます!

琳架さん、こんばんは。バレンタイン話を飾って下さってありがとうございますv
本当に感想をたくさん書いて頂けて、にやにやが止まりません! とても嬉しいです^^

確かに下駄箱にはそんなに入りませんね。。。た、多分、全部チ○ルチョコだったんですよ! あれだと下駄箱にもたくさんの個数を入れられますし(苦しい言い訳……) それにしても琳架さんの突っ込みはいつも鋭いので、たじたじしてしまいます……!(笑)
希美さん編は三時間で書き上げたんですか!? すごいです! 私は最短でも二、三日掛かってしまいます^^;

元気が出たとおっしゃってもらえると、本当に嬉しいです。喜んで頂けて、私も幸せですー♪
今回は書かせて下さって、お受け取り頂きましてありがとうございました!
  • posted by 朱音
  • URL
  • 2011.02/17 18:55分
  • [Edit]

飾らせて頂きました!

コメントを書くにあたって、ずーっと読み返していたら、あんなに長くなってしまった感想です(笑)
というわけで、飾らせて頂きました~! 私こそ、にやにやが止まりませんでしたよ!

あ、なるほどチ○ルチョコ! その手がありましたね!
って、ごめんなさい~っ、突っ込んだつもりはなかったんです私……。

ええ、希美編は本当にあっという間でした。それもこれも朱音さんからの頂き物を読ませて頂いたからですよ~。冗談抜きで! 構想自体はあったものの、筆が全く進まず、頭の端に引っかかっていただけですから。

本当に元気を頂いて、少し創作意欲が戻ってきたようです。これで時間さえあればいいんですが……(笑)
お返しに、私も何か書かせて頂きたいと思います。が……何を書こう、と思案中です。
もしリクエスト等がありましたら仰って頂ければ、最大限努力させて頂きます! お気に召すかは運任せですが(笑)

それでは、本当に嬉しいサプライズ、ありがとうございました!

  • posted by 琳架
  • URL
  • 2011.02/18 21:46分
  • [Edit]

こんばんは!

琳架さん、こんばんは! 度々コメント失礼します。

チ○ルチョコで納得して頂けたようで、安心しました^^(笑)
でも、下駄箱を開けた途端に大量のチ○ルチョコが落ちてきたら伊吹くんもびっくりですし、拾うのも一苦労ですよね。困るを通り越して腹立たしくなるかも?(笑)
琳架さんもお忙しいでしょうし、私が勝手に書かせて頂いたんですし、お返しは結構ですよ~! ……でも、もしも琳架さんの気が向きましたら、六耀と時雨でちょっといい感じ(甘め)なお話を書いて頂きたいですv
お返しを遠慮する気持ちと、出来れば書いて頂きたい気持ちとが混じってすみません; でもどちらも本当の気持ちなんですよー。

では、この辺で失礼いたします!
  • posted by 朱音
  • URL
  • 2011.02/19 19:14分
  • [Edit]

承りました!

いえいえ、コメント頂くのはとても嬉しいです~。
ふふ、チ○ルチョコでも伊吹は頑張って拾ってると思いますよ(笑)根が真面目なので。

お返しの方、下手をすれば今日、明日には出来上がってしまうかも知れません。甘いお話……に、なればいいなぁと思いつつ(笑)何だか本当に、創作意欲が戻ってきてて、思い付いちゃったので(笑)

出来上がりましたら朱音さんの掲示板にてお知らせ致しますので、お待ち下さい~。

それでは、朱音さんのお気に召すことを祈りつつ。
  • posted by 琳架
  • URL
  • 2011.02/20 13:38分
  • [Edit]

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