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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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黄昏色の詠使い 始まりの二人

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10巻 セラの塔でネイトを待つカインツとイブマリー


「……イブマリー?」
「……久しぶりね」

 セラの塔の一室で、何度目かの再会を果たした。否、エルファンド時代この姿の彼女と会うのは────競演会以来かもしれない。

「……何の悪戯なのかな、これは」
「わたしは何もしていないわよ」
「もちろん、キミじゃなくて」

 カインツの言葉に、ムッとした様子もなく、イブマリーは静かに告げる。そんな彼女に苦笑しながら、小さな姿を見下ろすけれど、イブマリーの視線は入口ばかりを見ている。

「ボクが言いたいのは、どうしてキミと二人なのかな、って」
「嫌ならわたしは別の場所へ行くけれど?」
「……意地悪だね、イブマリー」

 カインツの問いの答えを知っているはずなのに、敢えて別の意味に言葉を捉えるイブマリーに向かってそっとため息をついて見せると、小さく笑う気配がした。

「言ったでしょう? 私、あなたには意地悪したくなるのよ」

 ふふ、と悪戯めいた笑顔。もしあの時に勝負なんか持ち掛けず、ずっと傍にいれば、こんな笑顔ももっと見られたのかな────。そう思いながら、もう一度問い掛ける。

「……本当は答え、解ってるんだろう?」
「解っているわけじゃないわ。推測でしかないけれど……。多分……私とあなたがここにいるのは、ネイトあの子にとっての始まりだから、じゃないかしら」
「始まり……?」
「そう」
「始まり、か……。うん、そうかもしれないね」

 異端の名詠を構築しようとしていた少女イブマリーと、未踏の領域に踏み込もうとした少年カインツ。すべては、あの約束から始まったのだ。
 そしてその約束は、ネイトにとって最初の理由だったのだろう。名詠を学ぶ目的として。
 イブマリーがネイトを引き取った事、その子に自分の名詠を教えた事に、どんな思惑があったかは推し量れないけれど。それでも彼女は、彼女なりにネイトを愛し、慈しみ、育てた。

 二人の約束。それが始まりだというのなら────。

「だから、その姿なのかな?」

 エルファンドを卒業した時と変わらぬ姿。覚えているままの声。そう首を傾げれば、イブマリーは懐かしい制服の裾を指先で摘んでみせた。

「そうかもね。……どうせなら、あなたと同じくらいの歳の頃の方が良かったのに」

 そうすれば、きっとこんなに身長差もなくて、……彼の顔を盗み見ることだって容易かった。下から見上げると、カインツの瞳にあっという間に捕まってしまうから。
 そんなイブマリーの心情など全く気付かずに、小さく呟かれた後半の言葉を聞き取れなかったカインツはまた首を傾げた。

「ん? 何か言った?」
「何でもないわ」

 それきり、沈黙が続いた。ネイトはここまで辿り着けるだろうか。そして、クルーエルを助け出すことが出来るだろうか。
 まだ彼の足音は、聞こえない。

「……あの子なら、大丈夫」

 カインツの心を読んだかのように、タイミング良く告げられた、力強い言葉。

「イブマリー?」
「ここまで来るわ、……必ず」
「……そうだね。誰かさんに似て、一途で頑固者みたいだから」

 どこまでも真っすぐで、純粋で。そんな彼だから、何となく手を差し延べたくなる。
 と、隣が何故か不穏な空気に包まれた。

「────誰が頑固者ですって?」
「キミだとは一言も言っていないよ?」

 にっこり、と笑うイブマリーに、カインツも負けずに笑い返した。
 笑顔で凄まれたって怖くない。独りぼっちだったこの小さな黒魔女が、目の前で笑っているだけで、カインツは幸せを感じられるのだから。

「……いつまで笑っているのよ」
「いつまでかな?」

 コートのポケットに両手を突っ込んで、枯れ草色の詠使いカインツは、ちょっとだけ拗ねているらしい黄昏色の詠使いイブマリーに飄々としてみせた。



 夜明け色の詠使いネイトがこの部屋に辿り着くまで、あと少し────。


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