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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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MIRAGE【7】 ~やきもち~

MIRAGE 目次 一次創作Index

『……そのひと、だれ?』



 ファラスの涙が止まった後、エイドとディックが湖の水を竹筒に汲み入れる。ディックが追加を持ってきてしまったので、ランディルも手伝っていると、ファラスも一緒に手伝ってくれた。

「えーと、ファラス、さん?」

 レイティアの姉だというのなら、少なくともエイドやディックよりは年上だろうと見当を付け、名前にさん付けで呼ぶと、彼女はくすくすと笑った。

「ファラス、でいいですよ?」
「じゃあ、ファラス。これから何処へ?」
「王都へ……。光の大神殿へ」

 その言葉を告げた時、それまで穏やかだった彼女の声が、ほんの少しだけ固くなったように感じられた。

「レイティアの暮らした街を、一度見てみたくて……それでも、なかなか決心がつかなくて、こんなに時間が経ってしまいましたけれど」
「お一人で旅を? どちらからいらしたんですか?」
「ジェスタの村ですが……何か?」

 不審げなランディルの言葉に、ファラスは小さく首を傾げて答える。その告げられた村の名前に、エイドとディックは仰天した。

「ジェスタの村からここまで!?」
「つーか、途中、魔物の巣窟って言われてるダグラスの森がある、あのジェスタ!?」
「? はい、そうです」

 あまりにも平然と言われてしまって、同い年の少年2人は顔を見合わせた。
 ジェスタの村は、ツァリアとの国境に程近い、そこそこ大きな村だ。しかし、滅多に人の行き来はない。何故ならその途中にディックが叫んだ、ダグラスの森があるからだ。
 別名、魔物の巣窟。鬱蒼とした巨大なダグラスの森は、強大な力を持つ魔物達が住みついているという。騎士隊が定期的に巡回し、人間に危害がないようある程度は排除するが、現れるのは中級の魔物ばかり。上級の魔物の姿を見た者はいないが、時折不気味なうなり声が響くとの事で、誰も足を踏み入れない森で有名だ。

「途中で魔物に一度も遭遇しなかったなんてそんな事は、考えられません。あなたは一体」

 ランディルの疑問は、エイドにも解った。女の一人旅なんて、普通に考えても有り得ない。せめて護衛として何人か共にいるはずなのに。しかも、その遠いジェスタの村からここまで、何の怪我もせずにいるとは……。

「ああ、それなら簡単です。私は少しばかり魔法が使えるので……魔物と遭遇したら、飛んでましたから」
「……飛ぶ? って、風の属性だっけ」
「そうだな。俺も空中浮遊の呪文、使う時あるし。にしても、それって運がいいなぁ。魔物の中には空を飛ぶのだっているのに」
「魔物の巣窟とは言っても、ジェスタの村から王都に向かうには、森の外周を通ればいいだけですから、比較的魔物も少ないんですよ?」

 とりあえず、納得は出来る答えを得て安心したのか、ランディルが僅かに気を緩めたのが解った。

「ならば、共に参りませんか? 我々も王都へ向かう所ですし、ここから先も、魔物が出ないとは限りませんから」
「え……。ですが、あの、私……騎士様にお支払い出来る程の手持ちがなくて……」

 何を遠慮しているのだろうと、エイドとディックが揃って首を傾げた。提案をしたランディルは、一瞬きょとんと瞳を丸くしたあと、彼女の懸念に気付いたらしく、優しく微笑む。

「護衛代なんて要りません。旅は道連れと申しますし、行き先は同じですし。そうですね、言うなれば貴女の事はついでですから」

 ついでって、とエイドは苦笑したが、確かにその通りだった。王都まで向かう道で出逢ったのなら、一緒に行ったとてこちらに不都合はない。
 ランディルのその言葉に、ファラスはホッとしたように「では、お言葉に甘えて」と小さく微笑んだ。

 ファラスを連れ、レト達が待つ場所へたどり着くと、ケイトが張っていた光の結界から、パミラがエイドを見つけて駆け寄ってくる。

「お帰りなさい! 遅いから心配しちゃったよっ」

 ランディルの左腕、エイドの右腕に自らの腕を巻き付けて、えへへっとパミラが笑う。彼女がこうやって2人の兄に抱きつくのは、淋しかった時や不安だった時が多い。エイドが考えているよりも、ずいぶん時間が経ってしまっていたらしい。

「ただいま、パミラ」
「……そのひと、だれ?」

 エイドの背後にひっそりと佇むファラスを見つけて、パミラが怪訝な顔をする。

「この人はファラス。俺達の騎士隊にいた治療師の姉だよ」
「ふぅん……?」

 いつもの明るいパミラだとは思えない程、低い呟きが聞こえた。じーっ、とファラスを見るその顔はどことなく膨れていて、エイドは首を傾げる。

「どした?」
「べつにっ」

 腕に抱きついたまま、ぷいっ、と顔を背けるパミラの行動の意味が解らない。くくっ、とすぐ傍で、喉の奥で笑う声が聞こえた。

「ディック?」
「気にすんな、パミラは拗ねてるだけだから。なー、ブラコンのパミラちゃん?」
「そんなんじゃないもんっ! 頭撫でるなぁっ!」

 ディックの大きな掌が、パミラの頭を撫でる。というか、ぐしゃぐしゃにかき混ぜている、と言った方が正しいかも知れない。絡まってしまった髪を手櫛で直そうにも直せなくて、パミラは「もう!」と文句を言いながら、母の元へ戻っていった。

「は? 何、どういう事だよ」
「今までお前が、自分以外の女といる姿なんて、パミラは見たこと無かっただろ? だからまぁ、自分だけのものだと思ってた『お兄ちゃん』が自分の知らない『女の人』を連れて来たってだけでちょっと拗ねてんだよ」
「……なるほど」

 義妹の行動に何とか合点のいく答えを教えてもらって、エイドは喉の奥で笑った。




 それから、魔物と遭遇する事2回。いずれもエイドとディック、ランディルとレトの4人組で撃退しながらも王都に着いた。
 ファラスを光の大神殿に案内し、騎士の候補達を宿舎へと連れて行き、部屋の割り振りなどはディックに任せて、バークレイ一家は王宮へと足を運んだ。
 そしてそこで、エイドはとんでもない話を聞く羽目になった。


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