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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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執事様のお気に入り クリスマスSS プレゼント?

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『今度は料理、くすねてきたりするなよ?』



「今日はクリスマスカラーにしてみるか」

 そう言って、少し幅の広い、けれど服のコーディネートを邪魔しないように、細かい赤と緑のチェック模様のリボンを、長い髪と一緒に編み込んで。公式なパーティーであれば、結い上げる髪を、今日は右耳の下で一つにまとめられた。

「いつ見ても器用だよね~……伯王って」
「そうか?」

 鏡に映る自分の姿と、その背後に立つ伯王を見つめながら、良は感心した。自分ではここまで器用には絶対出来ない。

「よし、そろそろ時間だ。行くぞ」
「うん!」

 差し出された手に、自分の掌を乗せて、パーティー会場へと歩き出した。

 12月25日。イヴよりも若干気分が盛り下がるクリスマス当日。今年は双星館で、有志によるクリスマスパーティーが催される。
 伯王にエスコートされながらパーティー会場に姿を現した良が見たのは、絹のリボンに生花で飾り付けられた壁、本物の大きなモミの木、確認は出来ないけれど、もしかしたらツリーのてっぺんにある星は金で出来ているかも知れない。

「わ……。け、桁が違いすぎる~」

 双星館での感覚に大分慣れたとは思っていたけれど、学校のイベントなどではなく、有志でやってもこれだけ派手になるのかとちょっと気後れしてしまった。

「ほら氷村、お前が作ったケーキもあるぞ」
「え、どこ?」
「右奥のテーブル。……それにしても、一体今日だけで何個ケーキ作ったんだ?」
「ん~……。軽く10個はあると思うけど」

 ブッシュ・ド・ノエル。チーズケーキ。生クリームケーキ。大小様々なケーキを作ったけれど、どれを何個作ったかなんてもう覚えていない。

「でも、楽しかったよ?」
「準備が大変だったけどな」

 有志とは言え、資金は潤沢に用意されており、ならば料理も豪華に! との事で白羽の矢が立ったのが、クッキング部だった。が、料理だけならまだしも、お菓子作りとなると途端に妙に方向へ行ってしまう料理人達の歯止め役として、部員ではない良も助っ人として参加した。

「あら、良ちゃん。まだこんな所にいたの? 席が埋まってしまうわ、早く早く」
「わわっ、待って薫子さん~っ。じゃ、じゃね、伯王! またあとでね!」
「ああ、最高のパーティーにしてやるからな」

 期待してる、と親指を立ててみせると、伯王も同じ仕草を返してくれる。たったそれだけなのに、良は顔がにやけるのを抑えきれなかった。



 それからのクリスマスパーティーは、良にとっては驚きの連続だった。
 提案者が挨拶を終えるとすぐに、会場の照明がパッと消え、ツリーのイルミネーションを頼りに、次々とライトアップされていくのはシャンパングラスで作られたタワー。会場をぐるりと取り囲むそのシャンパングラスのタワーに目を奪われている間に、一つ一つのテーブルに置かれたキャンドルに火が灯る。
 そして、手元に置かれた小さな蝋燭に火を移せば、会場中がほのかな灯りに照らされて。

「わぁ……っ」

 聞こえてくるのは何台かのピアノの音。ピアノで歌うクリスマスソングと言えば、良には子供の頃に歌った童謡しか思いつかない。案の定、ピアノは良の知らない旋律を弾き始めた。

「まぁ、賛美歌ね」
「賛美歌? へえ……これがそうなんだ……」

 歌詞を知らないから歌う事は出来ないけれど、どこか荘厳な音楽に、良はそのまま聴き入った。
 そんな催しが終わり、食事に手を付け始め。そういえば、と良は一つの記憶を辿った。
 初めてのパーティーの時、伯王は傍にいなかった。それでも、少しでも伯王にもパーティーの気分を味わって欲しくて、料理をくすねて、彼を追いかけて。
 さすがに今はしないけれど、あの時は「怖い物知らずだったなぁ」と思う。

「今度は料理、くすねてきたりするなよ?」
「わあっ!? は、伯王っ、いつの間にっ」
「専属はもう、主人の元に戻って良いと許可が出たからな。そうしたら、お前がじーっと料理を見つめたまま動かないから……また料理をくすねようと考えてるんじゃないかと」
「し、しないよそんな事っ。そりゃ確かに、その時の事思い出してはいたけど……っ、だって伯王、今回は一緒に食べられるんでしょう?」
「いや、俺は……」
「お世話なんてしてくれなくて良いから。ね、一緒に食べよう?」

 ずっと傍に立っていられて、紅茶のお代わりを頼んで、好きな料理を取って貰って。良が伯王にして欲しい事は、そんな事じゃないから。
 そう頼むと、伯王はふっと笑って良の頭をぽんぽんと撫でた。

「……全く、敵わないな氷村には」
「え? 何? っていうか何でみんな笑ってるのっ」

 同じテーブルに座っているLクラスの女子達が、揃って口元に手を当てている。

「ふふ、だって。やっぱり良ちゃんは良ちゃんなのね」
「えー?」
「伯王さん、こちらに席が空いてますからどうぞ?」
「では、お言葉に甘えて」

 結局、どうして自分が笑われているのかが解らないままだったけれど。
 伯王が隣にいて、薫子がすぐ近くにいてくれて。最初は爪弾き者だった自分がこうして受け入れられていると解った事が、もしかしたら聖夜のプレゼントだったのかも知れない。


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