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2010.12/24 [Fri]
LOVE SO LIFE クリスマスSS 交換
LOVE SO LIFE 目次 二次創作Index
※クリスマスSS
『夕方に少し出かけませんか? 4人で』
「わぁっ……」
詩春の目の前には、綺麗に飾り付けられた大きなクリスマスツリー。LEDでキラキラ光るイルミネーションに瞳を輝かせ、飽きずに見上げる彼女を優しく見つめる政二に気づくそぶりもなく。
「せーたん、きれー!」
「きれい!」
詩春の腕の中では葵が、政二の腕の中では茜が、感動を言葉にしようと一生懸命だ。
「綺麗……」
呟かれた言葉に視線を移せば、詩春も政二を見上げていた。
「連れて来てくださって、ありがとうございます!」
寒さで少し赤くなった頬を緩ませて、満面の笑顔で礼を述べる詩春を見て、連れて来て良かったと政二は思った。
「中村さん、24日なんだけど」
いつもの通り、二人を寝かせてから暇を告げようとした詩春を引き止めたのは、政二の声。
「はい?」
「施設の方のパーティーは、何時からですか?」
「えっと……7時半からです。けど……?」
「なら、夕方に少し出掛けませんか? 4人で」
「え……でも松永さん、お仕事じゃ?」
24日と言えばクリスマスイヴだ。仕事ではなくとも、詩春よりも綺麗な女の人達に誘われたりするのではないかと思ったのだが。
「夕方から休みなんだ。ちょっと遠いけど、施設のパーティーには戻れるようにするから、どうですか?」
断る理由なんて、どこにもなかった。茜や葵と一緒に出掛けるのは楽しいし、政二と一緒に出掛けられるのはとても嬉しい。だから詩春は、「ご迷惑でなければ」と返答した。
その後すぐに、「誘ってるのはこっちだよ?」と、政二に苦笑されてしまったけれど。
そして夕方、松永家を訪れた詩春は車に乗り込み、途中から「目を閉じてて」と言われて素直に言う通りにして5分ぐらい経って。「もういいよ」と言われて瞳を開ける。
連れて来られたのは、人のあまりいない、ただしきらびやかに飾られた、クリスマスツリーのある場所だったのだ。
腕から葵を下ろし、双子はテテテッ、とツリーの傍まで駆けていく。あまりにも大きなツリーと双子の身長差が、面白い。
「まだあんまり人、いませんね」
「6時前だし、……もっと暗くなってから来る人の方が多いでしょう」
恋人達のクリスマス、と言われるぐらいだ。確かにもっと暗くなれば、このツリーも、もっと綺麗に見えるだろう。
「どうしてこんな所、知ってらっしゃるんですか?」
「この時期はどこの局でもクリスマス特集だから、自然と耳に入ってたんだ。ここには別のアナウンサーが来たんだけど、すごく綺麗だって言うから、……中村さんに見せたくて。高校生じゃ、ここまではなかなか来られないと思ったし」
バスや電車を乗り継いでいくにはお金がかかる。時間も制限されてしまう。高校生では確かに、こんな場所まで来るのは難しい。だけど詩春には、車でここまで連れて来てくれる人がいる。
……それはとても、幸せな事だと詩春は思った。
「あ……そうだ。はい、これ」
「え?」
「クリスマスプレゼント」
差し出された小さな紙袋に、一瞬きょとんとして、自分も彼にプレゼントがあることを思い出す。
「あ、あの、私もあるんです、けど……」
「え……」
今度は政二がきょとんとする。背負っていたリュックから掌サイズの箱を取り出して、おずおずと差し出す。
「受け取って、いただけますか……?」
「じゃ、こっちも受け取ってくれる?」
二人で差し出していては受け取れないことに気付いた政二が先に詩春からのプレゼントに手を伸ばした。
「開けて、いい?」
「はい」
隣で紙袋を開ける音がする。彼の反応が怖くて俯いていると、「これ……」という言葉が頭上から降ってきた。
「ありがとう」
「え」
ツリーのイルミネーションと街灯に照らされている政二を見上げる。右手には、詩春がプレゼントした財布が握られていて。
「覚えてたの?」
「あ、はい」
少し前、茜と葵のクリスマスプレゼントの候補を見ようとホームセンターに行った時、そろそろ買い替えなきゃなぁとぼやきながら政二が見ていた二つ折りの財布。ちょっとだけお手洗いに行って来ますと嘘を吐いて、クリスマスプレゼント用に包装して貰った物だった。
「何だか俺達、似たような事してるね」
「え?」
「それ、開けてみて?」
紙袋を指差されて、詩春は戸惑いながらも貼ってあったシールを剥がす。そんなに重い物ではないけれど……一体なんだろう? と手を差し込んで、掴んだそれは。
「これ……あの時の」
「うん。見てたでしょう?」
楕円形の、バレッタ。政二の財布と同じようにホームセンターで見つけて、買おうか買うまいか迷って、結局手にする事のなかった春色のバレッタだ。
そしてあの日、詩春と同じように、政二も双子を自分に預けて、途中で抜け出した。だが、戻ってきた時の彼は何も手にしていなかったはずなのに、と首を傾げて問いかけると、「仕事帰りに寄って来たんだ」と、彼は照れたように笑った。
「良かった。受け取ってもらえて」
「私の方こそ。受け取って頂いてありがとうございます!」
バレッタを両手で握りしめて、自分より背の高い彼を見上げて。
ほっとしたような顔で笑う政二の姿が、妙に瞼に焼き付いた。
「え……?」
政二の手が、そっと頬に触れて、どくん、と心臓が音を立てた。自分とは違う大きな手の温もりが、肌に伝わる。
「……ほっぺた冷えてる」
「松永さんも、冷えてますよ?」
彼と同じように手を伸ばして、政二の頬に触れる。それは本当に無意識で、茜や葵にするのと同じ感覚だったのに。
「そろそろ帰ろうか」
政二の口が動くと同時に、触れていた頬も動いて、詩春はようやく自分の行動に気付いた。
「…………っ!」
答えたいのに、頷くだけで良いのに。何故か体が硬直してしまって、視線だけは彼の優しい瞳と交わっている。たちまち顔に熱が上り、おそらくは赤くなっているであろう詩春の様子にようやく自分の行動に気付いたらしい政二が慌てた。
「ご、ごめんっ。つい、寒そうだなと思って……!」
頬に触れていた手が離れ、いつの間にか近くなっていた距離が開いて、詩春は彼を直視出来ずに俯く。どくんどくんと脈打つ鼓動を必死で抑えながら、言葉を返す。
「い、いえっ、だだ、大丈夫、ですっ」
「か、帰ろう、うん。茜、葵ーっ、帰るぞーっ」
えー、と不満そうな双子の声が聞こえたけれど、政二は有無を言わさず双子を両腕に抱えて戻って来る。
そして、来た時よりも大分忙しく、詩春は施設へと帰ったのだった。
~夜・施設にて~
「詩春? 熱でもあんのか?」
「な、ないよっ? うん、大丈夫っ」
政二に触れられただけ頬が、未だに熱を持っているかのよう。顔が赤い事は自覚していたけれど、本当についさっきまで一緒にいた彼の事を、温もりを分け与えるかのように頬に触れた手を。思い出さない訳がない。
「でも顔赤いし。早めにパーティー切り上げて、とっとと寝れば?」
「う、うん、そうする……!」
詩春の想いとは見当違いの心配をする直に、誤魔化すように笑い返した。
~夜・松永家~
はしゃぎ疲れて眠ってしまった双子を撫でていた手を、政二はそっと見つめた。
(柔らかかったな……)
詩春の、寒さで少し赤くなった頬は、とても柔らかくて。政二の手では、彼女の顔をすっぽり覆ってしまうかも知れない。
「って! 何考えてんだ俺……っ!」
さっきの事は忘れようとばかりに、双子の傍に寝転がって目を閉じるけれど。
今度は、詩春の細く白い手が、頬に触れた時を思い出して、結局眠れたのは3時間後だった。
LOVE SO LIFE 目次
※クリスマスSS
『夕方に少し出かけませんか? 4人で』
「わぁっ……」
詩春の目の前には、綺麗に飾り付けられた大きなクリスマスツリー。LEDでキラキラ光るイルミネーションに瞳を輝かせ、飽きずに見上げる彼女を優しく見つめる政二に気づくそぶりもなく。
「せーたん、きれー!」
「きれい!」
詩春の腕の中では葵が、政二の腕の中では茜が、感動を言葉にしようと一生懸命だ。
「綺麗……」
呟かれた言葉に視線を移せば、詩春も政二を見上げていた。
「連れて来てくださって、ありがとうございます!」
寒さで少し赤くなった頬を緩ませて、満面の笑顔で礼を述べる詩春を見て、連れて来て良かったと政二は思った。
「中村さん、24日なんだけど」
いつもの通り、二人を寝かせてから暇を告げようとした詩春を引き止めたのは、政二の声。
「はい?」
「施設の方のパーティーは、何時からですか?」
「えっと……7時半からです。けど……?」
「なら、夕方に少し出掛けませんか? 4人で」
「え……でも松永さん、お仕事じゃ?」
24日と言えばクリスマスイヴだ。仕事ではなくとも、詩春よりも綺麗な女の人達に誘われたりするのではないかと思ったのだが。
「夕方から休みなんだ。ちょっと遠いけど、施設のパーティーには戻れるようにするから、どうですか?」
断る理由なんて、どこにもなかった。茜や葵と一緒に出掛けるのは楽しいし、政二と一緒に出掛けられるのはとても嬉しい。だから詩春は、「ご迷惑でなければ」と返答した。
その後すぐに、「誘ってるのはこっちだよ?」と、政二に苦笑されてしまったけれど。
そして夕方、松永家を訪れた詩春は車に乗り込み、途中から「目を閉じてて」と言われて素直に言う通りにして5分ぐらい経って。「もういいよ」と言われて瞳を開ける。
連れて来られたのは、人のあまりいない、ただしきらびやかに飾られた、クリスマスツリーのある場所だったのだ。
腕から葵を下ろし、双子はテテテッ、とツリーの傍まで駆けていく。あまりにも大きなツリーと双子の身長差が、面白い。
「まだあんまり人、いませんね」
「6時前だし、……もっと暗くなってから来る人の方が多いでしょう」
恋人達のクリスマス、と言われるぐらいだ。確かにもっと暗くなれば、このツリーも、もっと綺麗に見えるだろう。
「どうしてこんな所、知ってらっしゃるんですか?」
「この時期はどこの局でもクリスマス特集だから、自然と耳に入ってたんだ。ここには別のアナウンサーが来たんだけど、すごく綺麗だって言うから、……中村さんに見せたくて。高校生じゃ、ここまではなかなか来られないと思ったし」
バスや電車を乗り継いでいくにはお金がかかる。時間も制限されてしまう。高校生では確かに、こんな場所まで来るのは難しい。だけど詩春には、車でここまで連れて来てくれる人がいる。
……それはとても、幸せな事だと詩春は思った。
「あ……そうだ。はい、これ」
「え?」
「クリスマスプレゼント」
差し出された小さな紙袋に、一瞬きょとんとして、自分も彼にプレゼントがあることを思い出す。
「あ、あの、私もあるんです、けど……」
「え……」
今度は政二がきょとんとする。背負っていたリュックから掌サイズの箱を取り出して、おずおずと差し出す。
「受け取って、いただけますか……?」
「じゃ、こっちも受け取ってくれる?」
二人で差し出していては受け取れないことに気付いた政二が先に詩春からのプレゼントに手を伸ばした。
「開けて、いい?」
「はい」
隣で紙袋を開ける音がする。彼の反応が怖くて俯いていると、「これ……」という言葉が頭上から降ってきた。
「ありがとう」
「え」
ツリーのイルミネーションと街灯に照らされている政二を見上げる。右手には、詩春がプレゼントした財布が握られていて。
「覚えてたの?」
「あ、はい」
少し前、茜と葵のクリスマスプレゼントの候補を見ようとホームセンターに行った時、そろそろ買い替えなきゃなぁとぼやきながら政二が見ていた二つ折りの財布。ちょっとだけお手洗いに行って来ますと嘘を吐いて、クリスマスプレゼント用に包装して貰った物だった。
「何だか俺達、似たような事してるね」
「え?」
「それ、開けてみて?」
紙袋を指差されて、詩春は戸惑いながらも貼ってあったシールを剥がす。そんなに重い物ではないけれど……一体なんだろう? と手を差し込んで、掴んだそれは。
「これ……あの時の」
「うん。見てたでしょう?」
楕円形の、バレッタ。政二の財布と同じようにホームセンターで見つけて、買おうか買うまいか迷って、結局手にする事のなかった春色のバレッタだ。
そしてあの日、詩春と同じように、政二も双子を自分に預けて、途中で抜け出した。だが、戻ってきた時の彼は何も手にしていなかったはずなのに、と首を傾げて問いかけると、「仕事帰りに寄って来たんだ」と、彼は照れたように笑った。
「良かった。受け取ってもらえて」
「私の方こそ。受け取って頂いてありがとうございます!」
バレッタを両手で握りしめて、自分より背の高い彼を見上げて。
ほっとしたような顔で笑う政二の姿が、妙に瞼に焼き付いた。
「え……?」
政二の手が、そっと頬に触れて、どくん、と心臓が音を立てた。自分とは違う大きな手の温もりが、肌に伝わる。
「……ほっぺた冷えてる」
「松永さんも、冷えてますよ?」
彼と同じように手を伸ばして、政二の頬に触れる。それは本当に無意識で、茜や葵にするのと同じ感覚だったのに。
「そろそろ帰ろうか」
政二の口が動くと同時に、触れていた頬も動いて、詩春はようやく自分の行動に気付いた。
「…………っ!」
答えたいのに、頷くだけで良いのに。何故か体が硬直してしまって、視線だけは彼の優しい瞳と交わっている。たちまち顔に熱が上り、おそらくは赤くなっているであろう詩春の様子にようやく自分の行動に気付いたらしい政二が慌てた。
「ご、ごめんっ。つい、寒そうだなと思って……!」
頬に触れていた手が離れ、いつの間にか近くなっていた距離が開いて、詩春は彼を直視出来ずに俯く。どくんどくんと脈打つ鼓動を必死で抑えながら、言葉を返す。
「い、いえっ、だだ、大丈夫、ですっ」
「か、帰ろう、うん。茜、葵ーっ、帰るぞーっ」
えー、と不満そうな双子の声が聞こえたけれど、政二は有無を言わさず双子を両腕に抱えて戻って来る。
そして、来た時よりも大分忙しく、詩春は施設へと帰ったのだった。
~夜・施設にて~
「詩春? 熱でもあんのか?」
「な、ないよっ? うん、大丈夫っ」
政二に触れられただけ頬が、未だに熱を持っているかのよう。顔が赤い事は自覚していたけれど、本当についさっきまで一緒にいた彼の事を、温もりを分け与えるかのように頬に触れた手を。思い出さない訳がない。
「でも顔赤いし。早めにパーティー切り上げて、とっとと寝れば?」
「う、うん、そうする……!」
詩春の想いとは見当違いの心配をする直に、誤魔化すように笑い返した。
~夜・松永家~
はしゃぎ疲れて眠ってしまった双子を撫でていた手を、政二はそっと見つめた。
(柔らかかったな……)
詩春の、寒さで少し赤くなった頬は、とても柔らかくて。政二の手では、彼女の顔をすっぽり覆ってしまうかも知れない。
「って! 何考えてんだ俺……っ!」
さっきの事は忘れようとばかりに、双子の傍に寝転がって目を閉じるけれど。
今度は、詩春の細く白い手が、頬に触れた時を思い出して、結局眠れたのは3時間後だった。
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