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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 好きの言葉

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「せーたんはしはるたん、きらい?」



「せーたん、ちゅー」
「ちゅー!」

 胡座をかく政二の膝の上に乗り、目一杯背伸びをした双子が、彼の頬に口づける。どうやら最近のお気に入りらしい行動に、洗濯物を畳む詩春は微笑ましい気持ちになる。

(でもあのドラマ、キスしたのがほっぺたで良かった……)

 唇を触れ合わせる本当のキスシーンを見ていたら、この双子は素直に実行していただろう。そうしたらきっと、詩春だけではなく、政二だってうろたえる。
 あの日、双子に「せーたんきらい?」と聞かれて即座に否定して。「好きだよ?」と、心の中では言えた言葉は、喉の奥に留まって、声にはなってくれなかった。
 ごまかした詩春を、政二はどう思っただろう……。
 彼を好きだとは思う。けれどその感情は、一体どこから根付いた物かが解らない。
 母に対する想いとは違う。施設の大人達、一緒に暮らしている子供達、梨生や健のような友達に感じる想いとも、また違う。
 家族というには、遠い距離。それでも政二と詩春の距離は、一緒に過ごすうちにどんどん近くなっていく。

「せーたんはしはるたん、きらい?」
「えっ?」
「は?」

 茜の言葉に、詩春だけではなく政二も固まった。これでは、先日の逆パターンだ。

「すきなしとにはちゅーするの!」
「するのー!」
「あ、茜ちゃん、葵くんっ……!」

 あまりにも無邪気な双子に、話を反らそうと呼び掛けるも、小さな2対の瞳は、じーっと政二を見上げている。

「俺は────……」

 ゆっくりと、政二の視線が詩春に移る。瞳の中からは何を考えているのか読み取る事が出来なくて、何を言われるのか予想も付かなくて。
 言葉を発しようと、彼の唇が動いた瞬間。詩春は、すくっ、と立ち上がった。

「わ、私っ、お風呂のお掃除して来ますねっ」
「え!? 後で俺がやるからいいよ!?」

 前も同じような台詞を聞いたけれど、あの空気の中に居続ける事は出来なかった。早歩きをするように廊下を抜けて、お風呂場に辿り着く。
 浴槽に残ったお湯を抜いて、ほっと息を吐いた。

「……逃げちゃった……」

 彼の言葉を聞かずに逃げた事にちょっとだけ罪悪感を感じてしまう。
 彼の口から紡がれるであろう言葉が、怖かった。それに……例えどんな言葉を聞いたとしても、きっとどんな反応を返せばいいのか解らなかった。

(松永さん、気を悪くしてないといいけど……)





(俺は、何を言うつもりだった?)

 詩春の事は嫌いではない。嫌いなはずがない。茜や葵だけではなく、政二だって彼女にとても助けられているし、癒されてもいる。
 政二の答えを待たずに、逃げてしまった彼女。だが、それで良かったとも思った。
 正確な答えは、きっと言えないから。

 詩春を「好き」だとは思っている。及川に言われた言葉で、朧気ながらも自覚はしている。ただ、『人』として彼女の事を好きなのか、『女の子』として好きなのか。その線引きがとても曖昧で……。
 未だに膝の上にいる双子に視線を移す。躊躇いもなく、二人が「好き」だと口に出来るのはきっと、詩春のおかげだ。
 赤の他人の子供なのに、惜しみない愛情を、双子に与えてくれているから。
 それを言ったらきっと、彼女は少しだけ慌てて、それから照れたように笑うのだろう。その慌てる仕草も、笑顔までもが想像出来て、政二の口元に笑みが浮かんだ。

「あかねねー、しはるたん、だいすき!」
「あおくんもー!」

 体いっぱいで愛情を表現する姿が微笑ましくて、政二はつられて、ぽつりと零した。

「俺も……好きだよ」

 面と向かっては言えない。その言葉の意味も、重さも、儚さも……政二は知っているから。

 が、その後。戻ってきた詩春に、茜と葵が駆け寄って。

「「あのねあのねっ、せーたん、しはるたんすきって!」」

 とダブル音声で報告されてしまい、顔を真っ赤にした詩春に対して、どうフォローをするべきか、と悩んでしまった政二だった。


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