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執事様のお気に入り 甘いハロウィン【5】

執事様のお気に入り 目次  二次創作Index

神澤別荘編 中編



 九時になると同時に神澤家のハロウィンパーティーが始まった。とは言ってもメンバーは顔見知りばかりだ。

「……似合わないな、神澤」
「……お前に言われたくない」
「まぁまぁ二人とも。それ以外は嫌だって言ってたじゃない?」
「当たり前だ!」
「当然です」

 伯王が着ているのは、吸血鬼の衣装だ。征貴は死神。黒い衣装の二人とは正反対に、庵は白い衣装。頭には金の輪っか。

「……庵が一番似合ってないような気がするぞ……?」
「ん? 何か言ったかな、伯王?」
「いやなんでも」

 庵が着ているのは、天使の衣装だった。確かに見てくれは優しげだし、微笑みの貴公子なんて呼ばれてもいるが、その中身を知っている人間にとっては違和感この上ない。

「隼斗は?」
「まだ碧織衣さんに遊ばれてるよ? いい加減観念すればいいのにねぇ」
「……誰だって嫌だろう」

 碧織衣が隼斗に用意した衣装は狼男。ふさふさのしっぽを付けて、犬耳を付けるだけで済むのなら、隼斗とてこんなに時間はかからない。なのに、こんなに時間がかかっているのは……。

「お待たせ~。出来たわよ? ほら隼斗、とっとと出てらっしゃいな」
「何で俺だけいつもこんな役……」

 ぶつぶつ言いながら部屋から出てきた隼斗を見て、庵と伯王は瞬間的に吹き出した。

「お、おまえっ、似合いすぎだろ……!」
「うん、良かったね隼斗、似合ってるよ?」
「……もう何とでも言ってくれ……」

 想像はしていた。の、だが……想像するのと、実際に見るのとはまた別物で。
 隼斗はその全身が犬の着ぐるみだったのだ。しかもフードが付いているものだから、可愛らしすぎる。

「あーっ! 隼斗さん可愛い!」
「まぁ、やはりカメラを用意してくるべきだったかしら」
「写真ならあとでたくさん撮るから、良かったら送りましょうか?」
「では是非!」

 眼鏡の奥でキラキラと薫子の瞳が輝いたのを、伯王はしっかりと見ていた。
 哀れ隼斗。次号の黒燕画報に掲載されてしまう運命かも知れない。

「氷村、は……何だ?」
「えーっとね、メイドさん! こんなにレースが付いた服、着た事がないから何か、……変じゃ、ないかな……?」

 おずおずと伯王を見上げてくる良の表情が不安げで、伯王は思わず手を伸ばした。

「大丈夫だ、似合ってる」
「ほんとっ?」

 伯王の言葉で、……そんなたった一言で、ぱぁっと花が咲いたような笑顔を見せる良。こんな言葉で喜ばせられるなら、いくらでも言ってやる。彼女の不安そうな顔は、見たくないから。

「薫子さんが魔女でねっ、楠さんが猫娘なんだよ」

 黒いとんがり帽子を被った薫子と、黒い膝丈のワンピースに猫耳を付けただけの真琴。そんな真琴の傍に、征貴がゆっくりと歩み寄っていく。

「征貴……。変、ですか……?」
「いいえ、……お似合いです」
「……良かった……。征貴は……?」
「死神、だそうですが」
「征貴が……? ふふ」

 似合っていると思っているのか、はたまたその逆か。口元に手を当てて、真琴は小さく笑う。少し前まで、彼女はあんな風に笑わなかった。一時期お世話係として傍にいたけれど、真琴は寮に入るようになってから少しずつ変わって行っている。
 良い傾向だと、伯王は思う。彼女も、自分も、どうしても家の名前がついて回る。その中で、僅かでも自由な時間を生きる事を、伯王は許されたけれど……それももう、あと、僅か。
 良の傍にいられる時間が楽しくて、一日一日がとても長く感じるけれど、実際に時は止まってなどくれなくて。
 伯王に許された時間は、刻々と減っていく。

「伯王? どうしたの?」

 マントを引かれて、伯王はハッと我に返った。自分は今、一体何を考えて……。

「……何でもない」
「そう?」
「ああ。大丈夫だ、ごめんな」

 せめて、彼女といる時間を大切に。彼女の笑顔がいつでも見られる場所に。そう思いながら、伯王は良の腕を取ってパーティー会場である食堂へ向かったのだった。
 だがしかし、その手はすぐに離れる事となった。

「姉さんっ! 未成年に酒を勧めるな!」
「あらら?」
「兄上ー、見てー!」
「……理皇。どこから包帯なんて持ってきた!」
「橘に持ってきてもらったー」

 姉と弟に振り回されて、なかなか良の傍にいられない。彼女の傍には薫子がいてくれているから不安になる事は何もないのに、それでも、傍にいないと落ち着かない。
 ミイラ男にでもなるつもりだったのか、理皇の頭をグルグル巻いている包帯を外しにかかる。

「間違って首でも絞めたらどうする!」
「あら、理皇だってちゃんと解っててやってるわよ? ねえ?」
「うん!」

 どうしてこの姉と弟は息がぴったりなのだろう。おかげで長男の伯王はいつも振り回されているような気がする。

「ふふ、ほら伯王、氷村さん楽しそうよ?」

 視界の隅に、薫子と談笑している良がいる。征貴は死神の格好のまま、座っている真琴に給仕しているし、庵と隼斗は碧織衣が呼んでいたらしい彼女の友人達についている。
 そこに、何故自分がいないのだろう。伯王は良の専属なのに。そう溜息をついた時。
 ふと、良の視線が伯王を捉えた。照れたように笑って、小さく手を振ってくる。

【大丈夫?】

 声に出さずに、口の動きだけで伯王を心配する言葉を投げかけてくる。

「……ああ、大丈夫だ」
「兄上っ!」

 知らずの内にそう言葉にした伯王の服を、力強く理皇が引いた。良と会わせていた視線を外し、目線を下に下ろす。

「兄上は良のこと、すきなのかっ?」
「……なっ……! 何を言い出すんだお前はっ」
「だって兄上、良ばっかり気にしてる!」
「あのな、理皇。俺は、あいつの」
「専属だから、って言葉で、いつまで誤魔化せるかしらね?」

 ワイングラスを唇に当てて、碧織衣が意地悪く笑う。その問いを、伯王は聞かぬふりをした。その言葉を、その意味を、考えてしまったら、伯王は─────……。


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