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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE Trick or Treat?【前編】

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ハロウィン話 




「ハロウィンマーケット、ですか?」
「フリーマーケットのハロウィン版、だそうです」

 政二の手には、オレンジ色を基調とした、ハロウィンマーケットのチラシ。そのチラシがお気に入りなのか、茜と葵がぴょんぴょん跳びはねて、政二の手から取り戻そうとしているけれど、当然届くはずもない。

「4人で行きますか」
「あ、でも松永さん、今日は久しぶりのお休みじゃ……」
「うん、でも大丈夫」

 休みの日ぐらい、双子を詩春に任せてゆっくりしていればいいのにと思うけれど、政二は政二なりに、子供達の事を考えている。外に連れ出して、それで少しでも楽しい思いをさせてやりたいと、表情が物語っている。

『俺じゃ、そんな風に大笑いさせてやれないから……』

 いつだったか、政二がそう言っていたのを思い出す。

「ってわけで、ほら二人とも着替えろー。出かけるぞ」
「「おきがえー!」」

 ぱっ、と顔を明るくさせて、キラキラと目を輝かせる二人が、パタパタと着替えに走っていく。その様子を見て、詩春は微笑ましい気持ちになって、くすくすと笑ってしまった。

「中村さん?」
「松永さんは、本当に良いパパになると思います!」
「急に、何?」
「だって、茜ちゃんと葵くんの今の顔。大好きな人と一緒にお出かけできる事が嬉しいって、顔に書いてありました」

 本当の父親じゃなくても。例え二人を大笑いさせられなくても、それでも。
 茜と葵にとって、……詩春にとって、政二はどれだけ心強い存在か────。政二本人だけが、きっと解っていないのだ。

「私も嬉しいです。松永さん達とお出かけ出来るの」

 まっすぐ政二を見て、笑っていった言葉に、何故か政二が視線を外した。

「松永さん?」
「き、着替えてきます」

 口元に手を当てて、ほんの少しだけ頬が赤くなっていたのは気のせいだろうか。何か、彼が恥ずかしがるような言葉を言っただろうかと首を傾げたけれど、全く原因に思い至らない詩春だった。




「うわ……人いっぱいですねー」
「これじゃ歩かせらんないな。すぐ人の波に埋もれるよ、こいつら」

 どこを見ても、人、人、人。ハロウィンマーケット、と言うだけあって、店を出している人達の大半は仮装している。魔女に狼男、吸血鬼にフランケンシュタイン。黒猫に南瓜の被り物をしている人もいる。
 そんな大量の人の中に、双子を下ろすわけにもいかず、詩春が葵を、政二が茜を抱いて、通りを歩いていった。
 出店の商品もハロウィンに関連づけられているのかと思いきや、それはいつものフリーマーケットと変わらないようだった。それでも所々にジャック・オー・ランタンの蝋燭立てや、魔女の人形などが売られている。

「しはるたん、みてー」
「うん、なぁに?」
「くーくーしゃー!」

 詩春の腕の中から葵が指差したのは、フェルトで作られた救急車だ。しゃがみ込んで手に取ると、中は綿が入っているらしくふわふわしている。

「ふわふわ?」
「うん、ふわふわだね。あっ、茜ちゃん、あっちに黒猫さんのぬいぐるみがあるよ」

 気付いた政二も一緒にしゃがみ込んで、茜に黒猫のぬいぐるみを渡す。茜は嬉しそうに「にゃー!」と猫の鳴き真似をした。

「かわいーっ! 双子ちゃんですか?」
「あ、はい」

 店の売り子をしているらしい、魔女のとんがり帽子を被った、詩春と同じくらいの歳の少女が、双子を見て、とろけそうな顔を見せた。
 茜と葵は、初めて見る人に、詩春と政二の腕の中で体を強ばらせたけれど、売り子の少女はにこにことしているだけで特にそれ以上何をしてくるわけではないのが解ったのか、にこぉ、と笑った。

「まじょ?」
「そう、魔女さんだよ~。魔法かけちゃおっかなー?」
「やーっ!」

 といいながら、腕の中できゃはきゃは笑う茜と葵。普段は人見知りするのに、こんなに早く笑う事が出来るのは、この少女が持つ、元々の雰囲気のせいだろう。優しく、穏やかな空気。どこか詩春に似ていると、この時政二は思った。

「良ければそれ、差し上げますよ?」
「えっ、それはさすがに」
「あはは、気にしないで下さい。ここにある物全部私が作った物なので」
「これ全部? ……すごいね」

 乗り物も動物も、人形も十種類以上はある。それに、大きさも大・中・小揃っていて、茜と葵が持っているのは二人の片手で持てる小サイズだった。

「元々営利目的じゃないんです。……っていったら、相棒に怒られちゃいますけど。なので他の人には内緒ですよ?」

 しーっ、と唇に人差し指を当てて笑う少女の真似をして、双子も一緒に小さな指を唇に当てる。それでも政二は財布を出そうとしたけれど、「いーんです、私があげたいんですから」と言われてしまった。しかし、そういうわけにも行かないと詩春が困惑していると。

「うーん、それじゃあ……Trick or Treat?」

 いたずらかお菓子か。ハロウィンの定番文句に、詩春はバッグに入れていたカボチャマフィンを取り出した。

「どうぞ。たくさん作りすぎてしまったので、食べて頂けると私も嬉しいです」
「えっ、作りすぎて、って、あなたが作ったんですか!? うわぁっ、嬉しい! 手作りのお菓子なんて何年ぶりだろ」
「相棒さんにもどうぞ」
「いいんですか!? ありがとうございます!」

 にっこり笑う少女にマフィンを手渡して、葵は救急車を、茜は黒猫のぬいぐるみを嬉しそうに抱いたまま、その店を後にした。

「中村さん、マフィン良かったの? あげちゃって」
「はい! 元々みんなに食べて貰いたくて作ったんですけど……予想外に南瓜の量が多くて、たくさん作り過ぎちゃったんです。帰ったらおやつに出しますね!」

 施設でのハロウィンパーティーで、みんな南瓜をくりぬいたはいいものの、その中身をどうするかまでは考えていなかったらしい。おかげで料理が出来る人が全員総出で南瓜を煮たり潰したり。詩春は食後のおやつにと、カボチャマフィンを作ったのだった。

「そっか。ありがと、俺さすがにお菓子なんか用意してなかったし」
「いいえ、私もたまたまですから」

 玄関先で政二に言われなければ、マフィンは松永家のリビングにおいていたはずだ。だから本当にたまたま持っていたに過ぎないのに、お礼を言われてしまった詩春は、何だかくすぐったい想いをした。


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